派遣社員向けにeラーニングを検討・導入するために理解しておくこととは?

派遣社員向けにeラーニングを検討・導入するために理解しておくこととは?

2021年1月に労働者派遣法の省令が改正され、それまで派遣社員を雇用時に教育訓練の内容について「周知するよう努める」こととされていたものが、「説明義務」になりました。派遣社員向けの研修の実施と受講の徹底化を狙ったものと考えられます。

今回は、最近、社員研修の主流となりつつあるeラーニングについて、派遣社員向けの導入を検討する際に理解しておくべきことについて解説していきます。

派遣社員の教育訓練をeラーニングで実施

派遣社員の教育訓練については、2015年の改正で派遣元にはキャリアアップを図るための段階的かつ体系的な教育訓練の実施が義務づけられていました。また、受け入れ先である派遣先には、自社の労働者に教育訓練する場合に派遣元から求めがあれば、派遣社員にも教育訓練をする配慮をしなさいとし、義務づけまではしていませんでした。

しかし、2020年4月の改正によって、派遣先に対する配慮義務は措置義務となり、派遣社員に対する教育訓練が義務づけられています。

派遣社員のキャリア形成に向けた支援は、単に法的要請に応えるということだけでなく、派遣社員の待遇改善と事業のサービス向上を図る戦略的な取り組みでもあります。

法改正後、派遣社員のキャリア形成のための手法として注目されているのが、派遣社員向けのeラーニングです。

教育訓練の実施形態には、OJT(On The Job Training)、集合教育としてのOff-JT(Off The Job Training)と非対面のオンライン研修があります。eラーニングは、このうち、非対面のオンライン研修に該当します。一般の企業でも、正社員の研修にeラーニングを取り入れているところも増えつつあります。

eラーニングは、①時間と場所を問わず学習できる、②繰り返し学習できる、③学習者の学習状況を管理できる、などの点が大きな特徴です。配信方法としては、録画した動画を配信サーバーにアップロードし、受講生の都合のよい時間に視聴するというのが一般的です。

このような特徴を持つeラーニングは、派遣社員のキャリア形成にも大きな効果を上げることが期待できます。

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●他の参考記事
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派遣社員のキャリア形成のポイント

ここで改正派遣法を踏まえ、派遣社員のキャリア形成のポイントについて考えてみましょう。

派遣社員の「キャリア形成支援制度」

派遣元には派遣事業としての許可基準として、派遣社員の「キャリア形成支援制度」を設けることが義務づけられており、段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていることが求められています。

その教育訓練の要件は次のようになっています。

・派遣社員のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること。
・実施する教育訓練が、その雇用する全ての派遣社員を対象としていること。
・実施する教育訓練が、有給かつ無償で行われていること。
・実施する教育訓練が、派遣社員のキャリアアップに資する内容であること。
・派遣社員として雇用する際に実施する教育訓練(入職時の教育訓練)が含まれていること。
・無期雇用派遣社員への教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置いた内容であること。

なお、教育訓練の時期・頻度・時間数については、次のような規定があります。

・派遣社員全員に対して入職時の教育訓練は必須であり、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の教育訓練の機会の提供が必要とされ、キャリアの節目などの一定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等を用意すること。
・実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣社員1人当たり、毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会を提供すること。
・派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるように就業時間等に配慮しなければならないこと。

このように細かいルールが課されているものの、教育効果を上げる上で不可欠な向学心について考えると、派遣社員の関心事は雇用と報酬の安定やワークライフバランスが優先され、正社員に比べ、一般的にあまり高くないという傾向があります。

そこで、キャリア形成に向けた支援を有効に機能させるためには、派遣社員自身がキャリアについて意識を高めることが大切です。

その上で教育訓練によって向上した能力を評価し、それに応じた派遣先の選定を行うなどの取り組みが重要となります。

派遣先で実施される教育訓練についても、派遣先で雇用する社員と同様の内容の教育訓練を実施するよう求めるべきでしょう。

実際の教育訓練の方法はさまざまであるため、どの段階でどの方法で実施するのかを検討することが必要です。OJT(On The Job Training)は派遣先での対面によるほかありませんが、集合教育については対面型Off-JTと非対面型のオンライン研修があります。オンライン研修もICT教育であり、Zoom、TeamsなどのWeb会議ツールを使用し、リアルタイムで実施するものと、eラーニングで視聴するものがあります。

eラーニングについては、派遣社員のキャリア形成に向けた支援では大きなメリットがあります。それは派遣社員が学習する上で時間と場所を問わないからです。

自分のペースで自由に学習を進めることは、ワークライフバランスの点で派遣社員にとって負担が大きく軽減され、自身のキャリアを考える余裕も生まれます。

対面型Off-JTとeラーニングの特徴

集合研修の対面型Off-JTには、外部研修と講師派遣型研修があります。いずれも日常業務から離れ、受講者を会場に集めて専門家を講師として派遣する伝統的なタイプです。受講者間のグループワークやロールプレイングを行いやすいという特徴もありますが、会社側は派遣法で定められている交通費負担が生じます。

外部研修の場合、公開されているものであれば必ずしも自社で定めたカリキュラムと整合しないケースもあります。講師派遣型研修は、事前に講師とカリキュラムの擦り合わせも可能であり、その点では効果が期待できるでしょう。しかし、会場の手配、準備などの手間がかかることを覚悟する必要があります。

集合研修でも非対面型のオンライン研修の場合は、会場や交通費などのデメリットはなくなります。研修会社によっては専門講師によるディスカッションやワークショップなどの参加型プログラムを用意しているところもあり、非対面型のデメリットがカバーできるでしょう。

派遣社員向けのeラーニングのメリット

eラーニングは、オンデマンド配信によって、何より、場所と時間を問わず受講できるという大きなメリットが挙げられます。また、反復学習が可能であり、派遣スタッフは自分のペースで進めることができるため、負担が少ないという特徴もあります。

企業側としては、eラーニングの運営は研修会社が行いますから、手間はかなり軽減されます。もちろん会場のコストや交通費の負担は発生しません。法律で義務づけられている派遣元台帳用データもそろいます。段階的かつ体系的な教育訓練を実施するという点では、豊富なカリキュラムのeラーニング講座を開講している研修会社を選べば、派遣会社が悩む必要もありません。

こうした各研修方法のメリット、デメリットを考慮すると、研修の効果を上げるためにはひとつの方法ではなく、複数をうまく組み合わせることがベストといえます。

派遣法が定める段階的かつ体系的な教育訓練の実施は、会社にもよりますが、担当部署にとってハードルは低くありません。自社独自の知識・ノウハウに関するものでなければ、質の高い教育を提供する研修会社をうまく活用するのがよいでしょう。

効率性と教育コストの負担なども考慮すれば、今後の教育訓練のトレンドは、ICT教育であるeラーニングを含めたオンライン研修となる可能性があります。

派遣社員のeラーニング導入を成功させる4つのポイント

派遣社員の教育訓練にeラーニングを導入する場合、重要なポイントがいくつかあります。ここでは4つ挙げておきましょう。

①利用目的と対象者を明確にする

まず、eラーニングの利用目的を明確にすることが大切です。効率性やコストにおけるメリットは、あくまでも教育方法としてのものです。利用目的は、派遣社員の段階的かつ体系的な教育訓練を実施することです。

対象者は派遣社員であり、キャリア形成に向けた支援を有効に機能させるためには、派遣社員自身が主体的に学習に取り組むことができる工夫をすることが大切です。派遣社員に求める人材像を明らかにし、どのようなキャリアを形成してほしいか提示し、派遣社員と共有しておきましょう。

また、eラーニングの運用では学習管理システムにユーザー属性情報を登録し、IDとパスワードを発行する必要があります。ユーザー属性情報とは、年齢、性別、所属組織、入社年次など、氏名のほかに管理する情報のことであり、属性情報で対象を限定し、特定のeラーニングを配信することができます。

例えば、派遣社員としての入社年次の範囲を指定すれば、その層にだけ必要な研修を受講させることが可能です。

②豊富なコンテンツがあるか

eラーニングを提供する研修会社は、多数あります。派遣社員向けの研修を行っており、豊富なコンテンツを用意している研修会社を選びましょう。

派遣社員の段階的かつ体系的な教育訓練が可能なカリキュラムを踏まえ、派遣社員自身が学ぶべきことを自覚でき、自主的に学習できる教材であることが望ましいといえるでしょう。

eラーニングの教材は、研修会社では標準的なものを制作しており、一般的にはそれを教育訓練に導入することになります。しかし、自社が派遣社員に求める人材像からカスタマイズしてほしいということもあるかもしれません。こうした場合にも対応できることも重要です。

③導入環境は整備されているか

eラーニングの利用環境は、オンプレミス型とクラウド型があります。クラウド型の場合には研修会社が管理・提供するサーバーに構築されているシステムを利用するためサーバーの設置は不要ですが、オンプレミス型では自社で設置が必要になります。

受信する端末についても検討しなければなりません。パソコン、タブレット、アンドロイド、スマートフォンなどですが、対象者全員がいずれかを利用できることが大前提です。また、この段階では、受講生となる派遣社員にもeラーニングによる研修の実施について、告知しておくことも忘れてはなりません。

スマートフォンについては、個人所有のもので受講させる場合、通信料などで配慮するほか、業務用の端末を貸与するといった対応も検討するべきです。

④運用体制を整備する

クラウド型であれば、システムの設置は管理画面のログインだけで完結するのが一般的ですが、いずれにしてもeラーニング専用のサイトを開設することになります。

受講者登録、教科・単元の登録とコンテンツの割り当てなどの準備が終了すれば、実際の運用開始に向けてユーザーや教材データの登録、公開設定などの動作確認をします。

導入時の運用準備から実際に導入してからもしっかりとサポートしてくれる研修会社を選ぶことが大切になります。

派遣社員向けにおすすめのeラーニング

派遣社員向けのeラーニング導入を検討する際に理解しておくべきことを解説してきました。

派遣社員の段階的かつ体系的な教育訓練が可能なカリキュラムであることと、派遣社員自身が学ぶべきことを自覚でき、自主的に学習できるeラーニングサービスであることが重要な要件となります。効果的な研修をeラーニングで行うなら、「派遣のミカタ」がおすすめです。

「派遣のミカタ」は、豊富なジャンルの5,300以上ものレッスンが用意され、階層別研修から職種別研修など、多様な研修カリキュラムに対応できます。

派遣社員が自主的に取り組めるようにスマホやタブレットなど全ての環境で視聴できます。また、自社の入職時研修教材や専門性の高い教材なども利用可能です。

詳しいサービス資料やオンライン研修、eラーニングシステムの活用に関するご相談など、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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